=== ArcMedia Magazine ============================================    建築情報ネットワーク「ArcMediaマガジン」          第10号    1998/06/04発行  (隔週発行) ================================================================== ■ArcMediaマガジンは、「まぐまぐ」を利用して、建築に関連した様々な 情報をお届けする電子メールマガジンです。 皆さん、こんにちは。購読ありがとうございます。 今回は、前回の続きです。 ================================== [ 1] 2つのキーワード ================================== これからの住宅における情報設備を考える上で,2つのキーワードが重要と なってくると思われます。  1つ目は「ワイヤレス(コードレス)」すなわち「無線」。  2つ目は「TCP/IP」プロトコルです。 ================================== [ 1] ワイヤレス(コードレス)化で対応する ================================== コードレス電話の普及によって、「電話」の場所や設備の制約が著しく改善 された事は前述しました。ワイヤレス(コードレス)すなわち「無線」で対 応すれば、設備インフラが抱える問題の多くは改善できるのです。何しろ, 親機となる機器を住宅内に一つ設置すれば良いのですから。 「コードレスフォンじゃインターネット出来ないじゃないか」という意見が 出てくるかと思いますが、通信の世界においては「有線」と「無線」は表裏 一体であり、基本的に有線で実現できたことは数年経てば無線でも実現でき ると考えてかまいません。 既に,PHSでは32k通信が実現されています。この通信容量は,INS64に比べ れば少ないものの,アナログのモデム通信とはほぼ同等の性能です。 しかも,PHSは「フルデジタル規格」であるが故にネゴシエーション(接続 する際に,相手先と接続手続きをする事)が早く,メールの確認など繋いだ り切断したりを繰り返すような場合には,想像以上に軽快に動作します。 通信コストが気になりますが,PHSの親機機能を有する「今時のTA」ならば PHSを家庭内コードレスフォンとして利用する事が出来,いとも簡単に、加 入電話料金で無線によるインターネットアクセスを実現できます。     有線よりも快適な無線環境は既に実現しているのです。 ================================== [ 2] 更に高速化する無線環境 ================================== しかも、来年にはPHSが64k通信に対応すると発表されています。こうなる と,INS64相当の通信容量が確保できるわけで,加入電話をアナログのまま 残し,データ通信は全てPHS(公衆回線利用)なんて事も現実味を帯びてき ます。 「INS64なら2チャンネル束ねることで128kだせる!」という意見も出てく るかもしれませんが,あと数年で「携帯電話」が     移動時0.144Mbps、歩行時0.384Mbps、静止時2Mbps の伝送速度を出せるようになるとしたらどうでしょう。 これは,次世代携帯電話の規格IMT-2000に提出されているNTT案(W-CDMA方 式)のスペックです。このNTT案は既にヨーロッパ案とのすりあわせが終わ り,あとは米国案とのすりあわせが残っているだけというかなり現実的な 規格です。     無線技術は確実に飛躍的な進化を進めているのです! 住宅内に電話線をズルズル這わせるよりも格段に効率的でスマートな環境 ではないでしょうか。 このように、有線でサービスされているものの多くは、今後、無線でも利 用できるようになります。在宅勤務などで最先端のインフラを必要とする のでなければ、無線サービス化されるまで待ち、極力ケーブルを這わせな いというのも一つの選択ではないでしょうか?   参考>「通信インフラ整備の動向」     http://www.arcmedia.co.jp/news/soho/bisdn.htm ================================== [ 3] コンピューターと対話する家電 ================================== 外部とのやりとりは「無線」で行うとしても,住宅内での情報のやりとり はどうでしょうか?。 無線が大容量化するとはいっても,イントラネット同様、住宅内では、より、 大容量で安定している「有線」のインフラが欲しくなってくることでしょう。 ところで,前回,家電が情報機器化されていくと述べましたが、これらは コンピューターと会話できる事を前提にしてきます。 コンピューターと会話できるということは、家電であっても、情報の入 力・出力がコンピューターと同じ規格を使うようになるということです。 この規格はほぼ見えつつあって、USB、IEEE1394、そしてTCP/IPの3つと考 えて構いません。 まず、この規格は大きく2つに切り分けられます。 すなわち,「パソコンを核とし周辺機器として各家電機器を接続するための 規格」と,「各機器同士を”対等”に接続するための規格」の2つです。 前者を利用するものとしてはキーボード,CRT,スキャナー,デジタルビデ オ(ビデオ編集用)などが想定されています。(実際の商品化はこれからで す) USBとIEEE1394はこの前者の規格であり,その性質上、接続機器はパソコン の周辺に配置され、ケーブル長も限定されているため、あらかじめ住宅内に 配線を埋め込むなどの対策は難しいと考えられます。 パソコンからUSBやIEEE1394のケーブルを引き出し取り回すこととなるで しょう。(これはこれで邪魔!ですが...) ================================== [ 4] なんでも繋がるTCP/IP ================================== 一方、後者,すなわちTCP/IPには「ネットワーク」と名の付くものなら基本 的に何でも接続が可能です。現時点でもパソコン本体を始め,プリンター, FAX,ビデオカメラ(遠隔操作),各種センサー,CD-ROMサーバーなど様々 なものが接続されています。 なにしろ「インターネット」は全てTCP/IPの上で実現されているのです。 その汎用性の高さを実感できるでしょう。当然、距離などの制約は一切あり ませんし,容量も回線が許す限り無制限です。 これが住宅内の通信設備にどういう影響をもたらすでしょうか? 前回取り上げたように,現在の住宅内通信設備は,インフラそのものは共有 していてもそれぞれ別々に機能しています。だから,同時使用は出来ない し,機器もそれぞれバラバラに用意しなければならず,コストアップの要因 となっています。 これは何も電話線に限った話ではありません。例えば,テレビドアフォンを 設置したとします。その時,そのモニターにリビングルームのTVを充てよう と思ってもうまくいきません。同じ「モニター」というサービスを提供する 機器であるにも関わらず,相互に会話できる言語が存在していないからです。 これが,TCP/IPという規格の上に家電が載ってくると大きく話が変わってき ます。TVやパソコンのCRTでテレビドアフォンをはじめとする映像情報を全 て受信できるようになりますし,リモコン一つでエアコンの設定もTVの音量 調節も自由に出来るようになります。 電話だって,モジュラージャックではなく,TCP/IPのケーブルにつなげるこ とで利用できるようになります。 ================================== [ 5] TCP/IPですっきり? ================================== つまりは,  「TCP/IPを走らせるケーブルだけ敷設しておけば良く」  「TV,電話を含め全ての情報設備は一つの情報コンセントに集約される」 ということになるわけです。 室内であれば無線であっても大容量化が可能ですから,情報コンセントとは, 無線でやりとりするようにすれば,各機器からのケーブルすら必要ありませ ん。天井にただ一つの無線受信機が設置されていれば良いわけです。 とはいったものの,「TCP/IP」だけで全てをまとめるというのは,まだ,始 まったばかりであり、近々に、家の建て替えなどを考えている人には,残念 ながら対応することは出来ません。 ================================== [ 5] 現状で出来ること ================================== 現状で出来ることは、こうした動向を踏まえ、増え続ける情報機器に対応し ていくしかありません。 それには、前回、述べたように「余裕を持った配線計画」と「先行 電力情 報配線システム」などが有効でしょう。 また、すぐに利用するしないに関わらず100base対応のケーブルを各部屋に 繋いでおくことは、将来的に役立つものと思われます。 なお、どうせ数年経てば技術水準が大きく変わる分野ですので、「無線化」 と「TCP/IP化」という2つのキーワードを念頭において、いたずらに設備の 種類を増やさないという心構えも必要です。 まだまだ、住宅用情報設備には不透明で先が見えないところが数多くありま すが、便利そうに見えてもメーカー独自規格などを避け、TCP/IPなど汎用的 なインターフェースをもつものを選択していくことが、効率的な設備計画に 繋がるものと思われます。 アークメディア通信>>>>>>>    アークメディアの「業界風雲」お読みいただけましたでしょうか?    http://www.arcmedia.co.jp/    この業界風雲ではこの「ArcMediaマガジン」よりも硬派な内容が    盛りだくさんです。    是非、ご一読ください! ================================================================ ○電子メールマガジン「ArcMediaマガジン」第10号 1998/06/04   発行元:株式会社アークメディア       http://www.arcmedia.co.jp/   (執筆:企画開発部 山田 雄一 mailto:youichi@arcmedia.co.jp)            【ArcMediaマガジンは、転載大歓迎です。】    【メールマガジンの登録・削除は「まぐまぐ」まで                http://mag2.tegami.com/mag2/】 ==================================== ArcMedia Magazine =========