=== ArcMedia Magazine ===============================================    建築情報ネットワーク「ArcMediaマガジン」          第11号    1998/06/12発行  (隔週発行) ===================================================================== ■ArcMediaマガジンは、「まぐまぐ」を利用して、建築に関連した  様々な情報をお届けする電子メールマガジンです。 皆さん、こんにちは。購読ありがとうございます。 梅雨に入りうっとうしい日が続いていますが,皆さんはいかがお過ごしでしょ うか? 私は車のエアコンの調子がいまいちで,フーフー言っていますが...。 さて,今回は建築家をはじめとした「建築のプロ」と呼ばれる人の能力につ いて考察してみましょう。 ================================== [ 1] プロのイメージ ================================== 一般の人にとって,「建築のプロ」というと,「デザインセンスがあり」 「設計図が書けて」「建築関連法規制に精通している」といった感じでしょ うか。 これらの能力は建築業務を行う上で,非常に重要なものではありますが,実 のところ代替不可能な能力でもありません。 住宅に限って言えば,一般の主婦の方が実用性に富んだレイアウトを思いつ くかもしれませんし,設計図の作図にしても,CADの登場と普及によって特 別な能力ではなくなってきています。建築関連法規制についても,「その気 になって勉強」すれば短期間で身につくものですし,エキスパートシステム が発達すればコンピューターに多くの判断や確認を任せられるようになるで しょう。 特に近年は一般向けの「戸建て住宅デザインソフト」が数種類登場してきて おり,そうしたツールを使うといとも簡単に住宅をデザインすることが出来 ます。その名もずばり「君も一級建築士」というものもあるなど,プロと一 般の能力差は「コンピューター」によって埋められつつあるようにも見えま す。 では,コンピューターや一般の人が代替できない能力にはどういったものが あるのでしょうか? 私は,「高さ」を含む空間の認識力がプロと一般との大きな能力差だと思っ ています。 ================================== [ 2] 建物は立体 ================================== ハウジング雑誌やデザインソフトの普及によって,部屋の大きさや浴室や階 段の位置などレイアウトデザインは身近なものになっています。前述のよう に,主婦の方が実用性に富んだレイアウトを思いつく場合もあるでしょう。 しかし,多くの場合それは「平面」に限定されたものなのです。 当然の事ながら,建物は「立体」であり「空間」の中に構築されたもので す。例え,平屋建てやマンションの各住戸であったとしても,室内には梁や 柱が出ていたり床には段差があったり,天井高にしても住宅やマンションな どによって様々です。2階建て,3階建てであれば,そうした各階の空間が相 互に繋がって一つの建物を作り上げており,ますます複雑になります。 簡単に言ってしまえば、平面からのイメージでは、それぞれの部屋の「面 積」は知ることは出来ても、「体積」まではなかなか認識できないというと ころでしょうか。 ================================== [ 3] 掴みにくい「高さ」 ================================== 試しに、近くのマンションでも一戸建てでも良いですが、眺めてみてその高 さと幅がどれくらいあるのかを考えてみてください。 幅については、結構容易に推定できると思いますが、高さについては「よく わからない」という人が多いのではないでしょうか?。 通常、我々が距離や大きさを判断する際には、周囲にある既知のオブジェク トから類推しています。例えば、一戸建ての脇に自動車が停まっていれば、 「この家は自動車の長さの約2倍だなぁ」と容易に想像できます。その人が、 「自動車は大体4〜5mくらいの長さだ」という知識があれば、この家の幅は 「だいたい9mくらいかな」と認識できるわけです。 実際には、植わっている植栽やブロック塀、ドアや窓の大きさといった様々 なものから「長さ」を認識しています。 では、なぜ、高さの認識が難しいのかというと、「比較となるオブジェクト が存在しない」からです。見上げてみれば解りますが、平面と異なり、建物 の周りには「空」が広がっているだけです。 そのため、平面に比べると立体のボリューム感は非常に掴みにくいのです。 ================================== [ 4] 空間としてのボリュームを感じられるか ================================== こうしたギャップは、更地の上に建つ予定の建物を想像した時に、明確な差 となって現れてきます。 空間としてのボリュームを掴んでおかないと、「手狭に感じる」とか「なん か圧迫感を感じる」といった事を引き起こします。外観はもちろんですが、 内部に対しても柱や梁などの存在は、雰囲気を大きく変質させることになり ます。 建物を建てる際には、動線やレイアウトといった平面計画も重要ながら、立 体として空間としてどうなのか?ということを考える必要があるでしょう。 建築家というのは、経験とセンスから空間ボリュームの把握に秀でた人であ るということが出来ます。 そして、そうした認識が出来る能力こそ、プロなのではないでしょうか? アークメディア通信>>>>>>>    ☆☆☆☆ 「特捜!商業開発」のご紹介 ☆☆☆☆    http://www.arcmedia.co.jp/news/takuya/takuya.htm    私の友人が、アークメディア内で連載しているコラムです。    若手建設コンサルタントの立場からみた、商業系施設について、様々    な切り口からまとめています。    是非、ご一読ください! ======前メールマガジンのフォロー==========  前回のメールマガジン発送後、いくつか問合せのメールをいただきま  した。  皆さんの関心の高い分野なのだなぁと実感しております。  いずれ、機会を見て動向などをまとめてみたいと思いますが、実は、  送付直後に大きな発表がありました。  それは、インテル、日本アイ・ビー・エム、NEC、日本HPが主体となっ  て家庭向けのパソコンと家電を相互接続する無線通信の仕様を策定に  入ったというものです。   参考:http://www.intel.co.jp/jp/intel/pr/press98/980603.htm  この規格によって、早ければ99年にはパソコンと無線で対話できる  家電が出てくる事になります。  想像よりも、速いペースでパソコンと家電とは融合し、住宅内の情報  設備も変化していくことになりそうです。  また、こうした融合物の一つの方向として、Web&メールの家電化とい  う製品が既に商品化されているというお知らせもいただきました。  http://www.nec.co.jp/japanese/product/nwp/mulco/10/1002.html  デジカメも含め、パソコンの機能を家電化したような製品で、住宅内  の情報設備の将来像の一つを提示しているようです。 ================================================================ ○電子メールマガジン「ArcMediaマガジン」第11号 1998/06/12   発行元:株式会社アークメディア       http://www.arcmedia.co.jp/   (執筆:企画開発部 山田 雄一 mailto:youichi@arcmedia.co.jp)            【ArcMediaマガジンは、転載大歓迎です。】    メールマガジンの登録・削除は      「まぐまぐ」  http://mag2.tegami.com/mag2/     私の個人ページ  http://users.arcmedia.co.jp/youichi/    で受け付けております。 ==================================== ArcMedia Magazine =========