=== ArcMedia Magazine ===============================================    建築情報ネットワーク「ArcMediaマガジン」          第13号    1998/07/02発行  (隔週発行) ===================================================================== ■ArcMediaマガジンは、「まぐまぐ」を利用して、建築に関連した  様々な情報をお届けする電子メールマガジンです。 ご購読ありがとうございます。 ================================== [ 1] あなたの街の景観は? ================================== 突然ですが、読者の皆さんは、どういったところにお住まいでしょうか? 私は、東京近郊のいわゆる「ベットタウン」に住んでいるのですが、近くで、 マンション建設の反対運動が起きています。 (といっても、既に竣工間近なのですが...。) 反対運動の起きている地区は、高台で駅からも近く、区割りも比較的大きな 古くからの「高級住宅地」といっていいところです。 私が子供の頃などは、この地区には大きな庭を持つ一戸建てが立ち並び、庭 に育つ木々の大きさに圧倒されたものです。 が、時は流れ、バブル期以降、庭はつぶされ、駐車場となり、一戸建てだっ た住宅は低層のマンションに置き換わっていきました。 私自身は、こうして街並みが移り変わっていくのも、一つの都市活動だと思っ ているので、「景観が破壊された」などと深刻には思ってなかったのですが、 今、問題となっている物件については、ちょっと「やりすぎ」かなと感じて います。 今までは、マンションに建て直されても3階程度の低層で、もともとの区割 りに余裕があったこともあり、それほどのプレッシャーとはなっていません でした。 特に、バブル期に建設された物件は資金に余裕があったため、外壁などにも 金をかけており、「建築家が景観も配慮して設計している」と思わせるもの でした。 が、今回、問題となっている物件については、6階建てで、かつ、道路ぎり ぎりまで建物が建てられた「容積稼ぎ」型のマンションで、そのプレッシャー は相当のものです。 しかも、道路を挟んで北側には昔からの平屋一戸建て(広い庭付き)が建っ ており、そこの住民にとっては、このマンションは暴力としてしか捉えられ ないようです。 ================================== [ 2] 始まってからでは遅すぎる ================================== 現実問題として、一旦、ディベロッパーによって事業化が決定された物件を 差し止めることは非常に難しいと考えるべきです。 ディベロッパーはその道のプロですから、法規制に反するような計画をたて る事はまずありませんし、住民対応・近隣対策をふまえた事業性も考慮して いるからです。 つまり、建築基準法や都市計画法などの法律から差し止めることも出来ない し、近隣住民が反対して、計画が少々遅れることがあっても事業そのものの 成否にかかわるほどの影響を及ぼすことは出来ないということです。 ================================== [ 3] 法は無力なのか? ================================== こうしたトラブルの多くみられるのが、   「この物件は、各種法制に完全に適合している。(だから事業化する)」 というディベロッパー側の見解と、   「この地域にはそぐわないのであるから、計画を変更して欲しい」 という近隣住民の意見のぶつかりあいです。 では、なぜ近隣住民が反対するような建物が、建築基準法や都市計画法によっ て規制されてはいないのでしょうか?。 不快に思う建物を規制できないのであれば、これらの法制度は意味が無いで はないか?という疑問が生じます。 マスコミなどの対応も、「法の不備」といった視点から論じられる事が多い ように感じます。 が、実のところ、そうも言えないのではないでしょうか。 建物の種別や高さなどを規制するのは建築基準法の「用途地域」と呼ばれる ものです。この用途地域は12種類に分類されており、それなりに細かく設定 されています。特に、住宅地に関しては細かく分類されたため、それぞれの 住宅地の特色がはっきりと示せるような地域分けとなっています。 つまり、本来なら、こうした用途地域が適切に指定されていれば、住民が不 快感を持つような建物は事業化されないのです。 問題なのは「法」そのもではなく、その運用にあるのです。 では、なぜ用途地域は「適切」に指定されていないのでしょうか? ================================== [ 4] 自己の財産権と規制 ================================== その背景には、自己の財産を出来るだけ高く保持したいという、住民側の欲 求があるものと思っています。 地価というのものは、様々な要件によって決定されますが、その中の大きな 要因として「利用価値」があります。 土地はただ持っているだけでは、何の価値も無いので、なんらかの施設を上 につくり、それを利用して活用します。当然のことです。 よって、上物として何が出来るのか?によって土地の利用価値は大きく異な るわけです。 低層の住宅しか建てることの出来ない土地と、超高層ビルが建てられる土地 とでは、例え、その他の条件が一緒であっても、その利用価値は大きく異な るのです。当然、この利用価値の違いは地価に反映されることになります。 この場合で言えば、マンションのような高い建物を建てさせたくなかったら、 用途地域の変更の際に、第1種低層住居専用地域などの指定を受ければよかっ たわけです。 が、この指定を受けると、自分自身の土地も低層の住宅を建てるのにしか使 えなくなりますから、土地の価値も下がりますし、後々の自己利用において も制限を受けることになります。 通常、こうした規制強化の方向には住民は無条件に反対を示しますから、行 政側としても現状追認のかたちで、曖昧な、より規制の緩やかな用途地域を 設定しがちになります。 ================================== [ 5] 住民のまちづくりに対するビジョン作りが必要 ================================== 結局のところ、住民、つまりは各地権者がバラバラに自己の権利を保留しつ つ、外部に対して文句を言っている間は、こうしたディベロッパーと住民と の対立というのはなくならないと思います。 一旦、事が起きてしまうと、それぞれの権利関係が表面化し、業者という第 3者も介在してくる。これではまとまるものもまとまるはずありません。 反対しつつ、内心、 「私のところもマンション業者に売却したら、いくらになるかしら」 などと考えている権利者が混じっていたら、運動もうまくいかないのも当然 でしょう。 住みよい居住環境を残したいと考えるのであれば、事が起こる前に相応の対 策を取る必要があります。 住民同士が、どういった居住環境を保全したいと考えているのかを、共通の 認識として銘記し、意志として表現しておくことが必要なのです。 じつは、そうした意志を表現し、実効力のあるかたちで運用するするための 方策として「建築協定」と「地区計画」という2制度が用意されています。 ちょっと長くなりました。以下は次号とします。(続) アークメディア通信>>>>>>>   アークメディアでは、このたび、日本興業株式会社様の会社&製品   紹介CD-ROMを制作いたしました。   会社紹介を始め、5冊の総合カタログ、納入実績・施工例などが1枚   のCD-ROMにHTML形式で格納されています。   近日中に、弊社インターネットサイトでも公開いたします。   ご期待ください。   また、紹介CD-ROMについてのお問い合わせは、      mailto:sales@arcmedia.co.jp   まで、お問い合わせください。 ================================================================ ○電子メールマガジン「ArcMediaマガジン」第13号 1998/07/02   発行元:株式会社アークメディア       http://www.arcmedia.co.jp/   (執筆:企画開発部 山田 雄一 mailto:youichi@arcmedia.co.jp)            【ArcMediaマガジンは、転載大歓迎です。】    メールマガジンの登録・削除は      「まぐまぐ」  http://mag2.tegami.com/mag2/     私の個人ページ  http://users.arcmedia.co.jp/youichi/    で受け付けております。 ==================================== ArcMedia Magazine =========