=== ArcMedia Magazine ==========================================    建築情報ネットワーク「ArcMediaマガジン」          第3号    1998/03/13発行  (隔週発行) ================================================================ ■ArcMediaマガジンは、「まぐまぐ」を利用して、建築に関連した  様々な情報をお届けする電子メールマガジンです。 皆さん、こんにちは。 このメールマガジンも第3号となりました。 もう、始めて1ヶ月になるんですね。今後ともよろしくお願いします。 2回ほど連続して、「建築家」を取り上げてきたので、今回は、テー マを変えて「ハウスメーカー」を取り上げてみようと思います。 ================================ [ 1] 建物を建てる人は誰? ================================ 近年、アウトドアレジャーが盛んですが、皆さんの中でも、キャンプ場 でテントやタープを張って楽しんでいる方もおられるでしょう。 これらのテントやタープは、慣れてしまえば数分で立ちあげる事が出来 ます。非常に簡易なものではありますが、数泊の滞在なら耐えうる「住 居」を自分で建てる事が出来るわけです。 現在の住宅のように大規模で複雑なものとなると、とても個人で造れる ような物ではありません。そもそも、組み立てキットのような説明書が ついているわけでもなく、建てる順番さえも全く分からないというのが 現実でしょう。よって、「専門家に頼まなくては」ならないということ になります。 でも、この「専門家」というのが意外と厄介です。家を建てる際に中心 となるのは(誰でも知ってる)大工さんですが、大工だけでは家は建ち ません。大工を始めとする職人は専門分野を持っており、水道工事、左 官、電気工事などはそれぞれの専門家に頼まなくてはならないのです。 といわれても、普通の人は工事区分すらよくわかりませんから、工事内 容に応じて専門の職人に頼むなんてことは出来ません。 そこで登場してくるのが、建設会社や工務店です。 建設会社や工務店では、建てたい建物の図面を渡すと、それを解析し、 「各専門家(職人)がいつ、どれくらい必要なのか」といった事を把握 し、手配してくれます。それらの職人は、自らが抱えている場合も、他 の工事会社に在籍している場合も、フリーの場合もありますが、必要に 応じて手配、確保します。(なかには、ゼネコンなどのように全く職人 を抱えていない場合もあります。) これらの手配をしてくれるので、建主としては建設会社/工務店とだけ 話をしていれば良く、非常に楽になります。 とはいっても、建設会社や工務店は「施工」が専門であるため、「設計」 は自分で行う必要があります。(建設会社や工務店でも設計部を持って いる事は多いですが、多くの場合、おまけ的存在です) 設計のパートナーとしては、前回、前々回でお話した「建築家」が挙げ られますが、自分に合った建築家を探すのも結構大変なのが現実です。 となると、一般の建主にとって、「設計から施工までをワンパック」で 扱ってくれる業者を望むようになります。こうしたワンパックを提供す るのが、「ハウスメーカー」という存在なのです。 ================================ [ 2] ハウスメーカー ================================ ハウスメーカーは、その名のとおり、住宅に特化した設計施工会社です。 ハウスメーカーは、本来、住宅を建てる際に必要となる様々な手配を、 一つにまとめ、設計から施工までを総合的にサポートします。 建主にとって、構想段階から入居まで一つの業者に一本化する事が出来 る便利さと、「ハウスメーカー」としてのブランド力に安心感を得る事 ができるのが特徴です。 ところで、一口にハウスメーカーといっても、大きく4つの種類に別け る事が出来ます。 1.施工会社発展型 建設会社や工務店の「住宅建築部」的な部分が独立、発展したタイプ。 本来、「施工」が主体であったが、「設計力」や一般への「営業力」を 高め、ハウスメーカーとして活動しているもの。 2.建材メーカー参入型 建材メーカーの子会社として設立されたタイプ。 家を建てるには様々な種類の建材が必要となるが、そうした住宅用建材 を製造しているメーカーが、自らの製品の販路拡大を目的として「ハウ スメーカー」を設立したもの。 3.不動産参入型 不動産会社の子会社として設立されたタイプ 宅地分譲を手がけるような不動産会社が、土地の分譲だけでなく、上物 となる住宅部分の利潤も囲い込むことを目的として「ハウスメーカー」 を設立したもの。 4.他業種参入型 建築・不動産分野とは直接関係の無い会社が設立したタイプ 「社宅整備部門」や製造業の「工場建設部門」、重厚長大産業の事業転 換における「遊休地対策部門」というように、直接、建築・不動産とは 関係の無い会社でも住宅や不動産に関するノウハウを有している部門が ある。他業種参入型にはこうした部門が独立したものが多い。 この他、輸入住宅の広まりによって輸入商社がハウスメーカーに参入す るケースも出てきている。 企業によって、参入の背景は様々であろうが、「ハウスメーカー」市場 そのものが魅力ある分野と判断した結果である事は間違いありません。 ================================ [ 3] ハウスメーカーはお得なのか? ================================ 企業にとって魅力的であるということと、消費者となる側の利害とは必 ずしも一致するものでは無いが、住まいづくりのパートナーにハウス メーカーを選択することははたして「お得」なのでしょうか? 建主にとって、ハウスメーカーが魅力的なのは、その敷居の低さにある かと思います。一般の「設計事務所」や「工務店」は例え住宅中心の活 動をしていても、エンドユーザーとなる「建主」とのチャンネルは十分 でなく、営業窓口も確立されてはいません。建主の判断基準となる実績 やプレゼンテーション資料などの情報量も段違いです。ハウスメーカー の情報は全国各地にある「住宅展示場」に出向くだけで十分に入手する ことが出来る事が好例でしょう。 □設計プラン よく問題とされる「設計プランの質」についてはどうでしょう。 ハウスメーカーの場合、基本的には「設計プラン集」をベースとして、 設計プランが立てられます。一方、建築家に頼んだ場合は、0からプラ ンニングされます。 アメリカでは住宅の多くがプラン集を元に作られているようですが、日 本のように土地が狭く、変形敷地も多いという環境の中では、特注のフ ルオーダーで設計した方が、ぴったりのものを作りやすいというのは確 かでしょう。しかし、大手のハウスメーカーであれば、抱える設計プラ ン数は非常に多く、日本の「住まい」という単一目的である事を考慮す ると、「十分な量」そして「一定の質」を確保しているといえます。 とはいえ、所詮、各々の建主の意向を中心にしたものではありませんか ら、それぞれの「ライフスタイル」を具現化するような住宅とはなりに くいのも確かです。 この辺の「質」の判断は、建主のもつ価値観やライフスタイルによって 左右される事になろうかと思います。 □費用面 費用面ではどうでしょうか。 建築家に依頼する事をためらわせる事の一つに「設計報酬をぼったくら れるのではないだろうか?」という危惧があります。一方で、ハウスメー カーならばあらかじめ料金表がきっちりと決まっていて、「明瞭会計」 というイメージがあります。 しかし、費用についてはそう簡単に判断できるものではありません。建 築家の場合、「設計報酬」のみが収入源となるのでその金額がしっかり と計上されることになります。ボランティアではないのだから当たり前 です。 一方、ハウスメーカー(や工務店)では極端な話、「設計料サービス」 という場合があります。しかし、「タダほど高いものは無い」といわれ るように、実際には設計スタッフを抱えているわけで、そのコストはど こかからひねり出されていると考えるべきです。 「ハウスメーカーの派手なTV CMの費用を誰が負担する事になるのか?」 「住宅展示場に立ち並ぶモデルハウスの費用は誰が負担する事になるの か?」という事を考えれば、費用のカラクリが単純ではないことは容易 に想像出来るでしょう。 ワンパック化が進むということは本来、建主が負担しなければならない 作業(工事業者の選定や各種手続きなど)を代行処理してもらっている ということでもあり、実際には見えない部分での費用負担を強いられて いると考えて良いでしょう。 本来、規模の大規模化は設計にしても、施工にしても、建材購入にして も一括で行う事が出来、1件あたりの単価を低減させる事が可能なはずで すし、一般の建主はそう考えていると思います。しかし、現実には町の 工務店がつくった一品の方が、ハウスメーカーのものよりも安価であっ たという事は良くある事です。建物の場合、質の問題との兼ね合いもあ るのでローコストである事が一概に良いわけではありませんが、この逆 転現象は意識しておいた方が良いでしょう。 □安心感 安心感はどうでしょうか? 住まいづくりは、非常に高額であり施工上のミスは、大きな負担となっ てのしかかってきます。当然、従前においてミスを発生させないよう万 全の対応を取るべきであるし、もし、起きてしまったときには「誠意あ る対応」を施工者に取ってもらえる事を期待することになります。 しかし、本来、施工上のミスや手抜きをチェックするために建築家(設 計事務所)における「監理」という役割があるわけです。ハウスメーカー や工務店に依頼した場合には、構造的に「監理」を行う配役が欠けてい るのですから、施工者の良心に期待するしかありません。 となると、トラブルが起きてしまってからの対応が重要となりますが、 町の工務店では、手抜き工事や施工ミスを理由に訴えたところで「あっ さり潰れてしまう」事も多くあるわけで、その点、そう簡単に潰れるこ とは無い(ようにみえる)ハウスメーカーの方が何かと安心かもしれま せん。 また、ハウスメーカーにしても悪質な工事業者を抱えている事は、負担 となるわけで、自浄作用が働く事も期待できますし、社会的な信用度も 段違いです。 とはいえ、このご時世「ブランド力」に過度な期待を持つことは禁物で すから、自分自身でチェックしていくことが必要です。 ================================ [ 4] ハウスメーカーは選択肢の一つと考えよう ================================ 一般の建主にとって、モデルハウスなどを通して具体的なイメージを提 供してくれ、情報も与えてくれるハウスメーカーの存在は、非常にあり がたいものです。 家づくりの第1歩は「モデルハウスめぐり」からという人も多いでしょう。 が、「家づくり=ハウスメーカー」というわけでも無いのです。 家づくりには様々な手法/選択肢があるわけで、その中で自分にとって 何が最適なのか?という事を考察してみる事が重要なのではないでしょ うか?。 アークメディア通信>>>>>>>>   アークメディアでは4月より、「住まいの情報」を正式公開します。   それに先立ち、現在、利用会員の募集を開始しております。   是非、ご来訪の上、利用会員登録(無料)やご意見、ご感想をお寄   せ下さい。          http://www.arcmedia.co.jp/ ================================================================ ○電子メールマガジン「ArcMediaマガジン」第3号 1998/03/13   発行元:株式会社アークメディア       http://www.arcmedia.co.jp/   (執筆:企画開発部 山田 雄一 mailto:youichi@arcmedia.co.jp)            【ArcMediaマガジンは、転載大歓迎です。】 ==================================== ArcMedia Magazine =========