=== ArcMedia Magazine ==========================================    建築情報ネットワーク「ArcMediaマガジン」           第6号            1998/04/17発行 ================================================================ ■ArcMediaマガジンは、「まぐまぐ」を利用して、建築に関連した  様々な情報をお届けする電子メールマガジンです。 天気の移り変わりが激しい今日このごろですが、皆様は大丈夫でしょう か? さて、前々回のメールマガジンにおいて、「工務店」を取り上げました。 いろいろと工務店が抱えている問題点を挙げましたが、今回は、発注者 となる建て主の立場から、工務店/施工会社を考えてみましょう。 ================================ [ 1] 結局は施工会社しだい...? ================================ 忘れてはならないのは、ハウスメーカーに依頼しようが、建築家に依頼 しようが、家を建てるのは「工務店」であるということです。 輸入住宅などで脚光を浴びている2by4工法などは、耐震性とかの特徴だ けでなく、基本的にパネルを組み合わせていくだけなので、施工が日本 の在来工法よりも容易であるという側面ももっています。こうした工法 では、施工者の腕はあまり問われません。(これが人件費の圧縮にもつ ながっていると言われています) 一方で、在来工法は無数の工程の組み合わせであり、施工者の腕と取り 組み方が結果に大きく反映することとなります。要は「作り込めば作り 込むほど質の高いものができる」一方で、「手を抜く気になればいくら でも抜ける」という事です。 この事だけでも「工務店選び」と同時に「工務店との信頼関係」が家造 りにいかに重要な事かわかるかと思います。 ================================ [ 2] 工務店のノウハウとは? ================================ ところで,施行業務が主体となる工務店ですが、単に、与えられた設計 図を正確に施行するだけでなく、建築家やハウスメーカーに無いノウハ ウを有している事があります。 それは「地域性」というノウハウです。 地場に根ざした建築家といった人もいるにはいますが,基本的に建築家 やハウスメーカーは特定の地域に依存したものではありません。 それに対し,工務店は大規模なものを除き,資材や人員の問題から営業 範囲は限定されており,結果としてその地域の「建物」や「住宅」といっ たものについて多くの情報が集中しています。そして,なによりも, 「その地域で実際に生活している」というのは大きなポイントです。 特に都市部に居ると地域性というのは、希薄に感じられますが、気温や 湿度、雨天時の水のはけ方、風向きなどなど少し移動するだけでも、結 構変化するものです。 建て替えならば,ともかく、他方に土地を求めての新築である場合には, 当該地における十分な情報を持たないまま企画・設計してしまうことは 非常に危険です。こうした状況に対し,一番的確な情報を持っているの は「地元の工務店」に他なりません。 しかも、工務店はその立場上、入居後のクレームを多く受けていること も見逃せません。そのため、居住後、「すぐ傷んでしまった」とか「思っ たように使えなかった」というような情報に一番近い場所にいるともい えるのです。特に、近年はリフォームに力を入れてきている業者が多く なってきたので、こうした情報が更に集まる傾向にあります。 ================================ [ 3] 工務店がPRしなければならないこととは? ================================ 一般に戸建住宅の寿命は25年といわれていますが、ハウスメーカーにし ても建築家にしても、その建築時には立ち会っているものの、その後の 「経年変化」に対してはどうしても縁遠くなってしまうのが現実です。 唯一、この手の生の情報に接しているのが「工務店」だといえるでしょ う。 前回述べたように、工務店の取り巻く状況は厳しさを増しています。コ スト制約の厳しい現状では、なかなか技術やノウハウといったものを認 めてもらい仕事に繋げるというのは難しいかと思いますが、情報を着実 に自社のノウハウとしてフィードバックしていくようにしていくことこ そが、重要と思われます。一方、建主としても見かけ上の料金だけでな く、そうした「信頼にたる」工務店を施工会社として選択したいもので す。 ================================ [ 4] 現実に起きていること ================================ しかし、現実的にはどうでしょうか。 先日、某TV番組の中で、抜打ちで検査をしたところ約3分の2の物件に おいてなんらかの「手抜き」「欠陥」が見つかったと報告していました。 欠陥の内容などまでは把握できなかったのですが、施行上のトラブルが 多く生じてしまっている事は確かでしょう。 こうした背景には、「慢性的な人手不足」「建築コストの低下」といっ た事があると言われていますが、実際には前回述べたような事情から長 年にわたって醸成されてしまった体質のようにも思われます。 私自身、数年前、いわゆる「ミニ開発」内の築約20年の一戸建ての改築 を依頼した事がありますが、頭領が現地を見に来て一言         「こんなに細い柱で建てていたのか?」 ともらしました。 確かに当時、学生であった私が見ても「細い」柱だったのですが、問題 なのは、その家を建てたのはその頭領本人だったということです。 つまり、施行にあたった本人、自らが不安を感じるような「一戸建て」 を建ててしまっていたという事になるのです。 この物件の施行が行われたのが70年代です。前述の「約3分の2の物件で 手抜きが見つかった」というのとあわせて、そのころから今とそう状況 が変わっていないというのは、「人手不足」とか「コスト制約」といっ た理由で片づけられる問題ではないでしょう。 ================================ [ 5] 手抜き・欠陥を助長しているもの ================================ この住宅の場合、質の低下を助長させた要因として「ミニ開発の建売住 宅」であったというのがあげられます。 現在、市場に溢れている「一次取得者向けマンション」と同様に、建売 住宅は「売れる」事が第一目標で作られます。東急不動産が千葉県に造 成した「ワンハンドレッドヒルズ」(通称:チバリーヒルズ  参考:http://www.mars.dti.ne.jp/~born1963/Chiba/hills1.html  http://www.green-park.com/enjoy/goodnews/n_scene42.htmlなど)であっ ても、「売る」つもりであったわけで、実際、バブル崩壊によって計画 の縮小もされたようです。要は、住宅建設にあたって「社会ストックの 生成」とか「良質な街作り」といったものは、そう重視されてはいない のが現実なのです。 「売れる」事が第一目標であるという事は、購入者像の懐具合を見て 「買える値段」にすることが最も重要となります。そのためには敷地も 細切れにしますし、建物だってコストを抑えます。ただ、それでは「魅 力」が少なくなってしまいますから、例えば、はやりの輸入住宅風にし てみたり、普通の庭をガーデニングスペースと銘打つ事で「華やかさ」 を増すわけです。 こうした商業路線の下で住宅施行を行っても、正直なところ「物を作る 喜び」といったものは感じられないでしょう。 これでは、意欲も責任感も弱くなり、それが新たな「商業路線」を助長 していくこととなります。 結局のところ、土地神話や都市部への人口集中、核家族化の進行といっ た要素から多くの住宅が、社会資本としてではなく、商業ベースで開発 されてきたという背景そのものが「手抜き」や「欠陥」を招いてきたの では無いでしょうか?。 ================================ [ 6] 建主がすべきこと ================================ 冒頭で述べました様に、日本の住宅、特に在来工法においては職人さん 達の技術や意気込みが結果に大きく関わってきます。意気込みを支えて いるのは職人としての誇りと、物をつくる喜び、そして相応の報酬に他 なりません。 となれば、建主がすべきことは、施工者と十分なコミュニケーションを とる事です。職人さんは特有のぶっきらぼーさがありますが、工務店の 社長/所長は営業も兼ねている場合が多いので、意外に付き合いやすい かと思います。逆に、コミュニケーションが十分に取れないような工務 店は敬遠した方が良いでしょう。 コミュニケーションを通して、意欲を引き出すことが無責任体質の回避 に繋がり、家づくりを成功に導くといえます。 とはいえ、性悪説に立たねばならないような状況にあるのも事実です。 そのためには、建築家に依頼し、「監理」をしっかりやってもらうこと が一番安心できる選択肢なのかもしれません。 アークメディア通信>>>>>>>>   冒頭でもお知らせしましたが、アークメディアでは4月1日より、正   式に「住まいの情報」をスタートさせるとともに、ホームページの   大規模なリニューアルを実施しました。   是非、ご来訪の上、利用会員登録(無料)やご意見、ご感想をお寄   せ下さい。          http://www.arcmedia.co.jp/ ================================================================ ○電子メールマガジン「ArcMediaマガジン」第6号 1998/04/17   発行元:株式会社アークメディア       http://www.arcmedia.co.jp/   (執筆:企画開発部 山田 雄一 mailto:youichi@arcmedia.co.jp)            【ArcMediaマガジンは、転載大歓迎です。】 ==================================== ArcMedia Magazine =========