=== ArcMedia Magazine ==========================================    建築情報ネットワーク「ArcMediaマガジン」           第8号            1998/05/18発行 ================================================================ ハウスクエア横浜探訪記 今回は,ちょっと趣向を変えて,住まいづくり情報施設である「ハウス スクエア横浜」の紹介と,そこで感じた「住まいづくりの情報」という 物を考えてみようかと思います。        ハウスクエア横浜のHP(http://www.housquare.co.jp/) ================================ [ 1] ワンストップハウジングセンター? ================================ 先日,ちょっと時間をとって神奈川県の港北ニュータウン内にある「ハ ウススクエア横浜」に行って来ました。 東京周辺の方なら,実際に行かれた方もおられるかと思いますが,この ハウスクエア横浜は「一人ひとりの住まいをここで実現するワンストッ プハウジングセンター」(パンフレットコピーより)と銘打った施設で す。 具体的には各インテリア・建材メーカーのショールームによる「住まいの 情報館」,住宅における音,光,熱,構造といったものの考え方や,バリ アフリー住宅などを体験できる「人にやさしい住まいづくり体験館」,建 築関連書籍を集めた図書館や住まいの相談カウンター,シミュレーション ルームなどがある「住情報スクエア」といった施設。そして,「住宅展示 場」が併設されています。 ================================ [ 2] ワンストップの威力 ================================ 東京新宿に「オゾン」という似たようなコンセプトの施設がありますが, オゾンには住宅展示場は併設されていませんし,ハウスクエア横浜は郊 外型ということもあり各施設規模が大きく,展示内容も豊富なのが特徴で, さながら「住まい博物館」といった趣すらあります。 コピーで「ワンストップハウジングセンター」と銘打っているとおり,新 築改築を問わず,住まいづくりに関する情報の集積には驚かされます。 通常,住まいづくりを考えた際に廻ることとなる住宅展示場,各種建材メー カー,不動産会社だけでなく,住まいに関する基礎知識,各種文献なども 「ワンストップ」で入手できる利便性には想像以上の効果があります。 都心近郊のニュータウン「港北ニュータウン」内に立地していることも, 整然とした快適な住まいづくりというビジョンを補完していると言えるで しょう ================================ [ 3] 情報が多すぎる? ================================ しかし,これだけの集積がなされていると「廻りきれない」という事が 起こるのも仕方ありません。 通常,個別のショールームを廻ったり,文献などを読んだりというのは, 立地的にショールームが近くになかったり,そもそも知っているメーカー が少なかったり,本屋に本が並んでいなかったりと,各人が情報に触れ る前に様々なフィルタリングがかかっている物です。 でも,こうした場で「さあこれが良い住まいづくりをするための情報だ」 と提示されてしまうと,そうしたフィルタリングが効かず,一般の人に は情報過多となりかえって混乱の元になるのではないか?という危惧も 感じてしまいます。 が,それまで知らなかった「良い物」を提供してくれる業者と巡り会う 可能性があることも事実な訳で,利用者としては対応に苦慮するところ です。 ================================ [ 4] 2つの情報とは? ================================ ところで,ここを訪れてあらためて感じたのは,一口に「住まいづくり の情報」といってもその情報には,「住まいづくりに関する知識や考え 方」という分野と,「実際の住まいとして具現化するための商品及び企 業」という2つの分野があるということです。 通常,私たちが物を購入する際には,後者の「商品及び企業」の分野の みを判断基準としています。例えば洗濯機を買う場合には電気屋に行っ て,「一度に何キロまで洗えるのか?」とか「どこのメーカーか?」と いった程度の情報で商品を選択し,購入しているかと思います。 しかし,それらの判断基準となった情報自体が企業のTV-CMであり,実は 主体的な情報判断はしていなかったりします。 洗濯機を買うのに電気技術屋が執筆した「洗濯機の構造と洗い方の特徴」 といった様な本を購入してきて読む人はいないでしょう。 身の回りの中では自動車が比較的,前者「知識や考え方」といったもの を持って対処するものかもしれません。 例えば,「4WD機能とはどういった物で,自分には必要なのか?」という のは具体的な商品や企業とは関係なく,自動車というものに自分が主体 的に判断するものだからです。でも,「あの車かっこいい」とか「うち は代々○○メーカーの車」というようなケースも多くあるわけで,必ず しも自分自身で性能に対する要求基準を作って,それに見合う自動車探 しをしているわけではありません。 ================================ [ 5] 建主に相応の知識を要求される住まい作り ================================ しかし,住宅に関しては,価格が高価であること。基本的に一品生産で あること。一生に何度も経験する物ではないので経験則が成り立たない こと。といった要素から購入者(建て主・施主)に相応の知識や考え方 (ビジョン)が要求されることとなります。 しかも,一つの住宅は複数のメーカーの製品から構成されており,商品 や製造メーカーなどに対する知識も必要となります。 もっと厄介なのは,各メーカーが自社製品の宣伝も兼ねて各建材などの 考え方や特徴,選び方などを広報しており購入者としてはそれが絶対的 な価値を持った解説なのか,自社製品のPRを主体とした解説なのかとい うことを判断しなければならないことです。 一般に,各メーカーが行う紹介の方がお金がかかっており,プレゼンテー ションも良質なため,建築家が書いた解説本などよりもインパクトがあ るのが実状です。 ================================ [ 6] 「ワンストップ」としての意義 ================================ こうした,メーカーサイドの情報に偏りがちな状況の中で,わかりやす い形で両者の情報を集積している「ハウスクエア横浜」は,(情報過 多になることは否めないとしても)住まいづくりにおいて大きな力とな るように思われます。 しかし,もっと言えば,今後,インターネットが更なる広がりを見せて いく中で,「ワンストップ」の意義は変化していくことになるかもしれ ません。例えば,前述の「フィルタリング」作業は事前にインターネッ トのホームページ情報で行い,現地ではピンポイントでショールームを まわるといった具合です。 こうすることで,休日の限られた時間の中で,効率よく,自分の求める 情報を取得できるようになります。しかも,その施設が「ワンストップ」 化されていれば,A社の情報を見にいった際に,隣接するB社の製品も, 目に入ってくるわけで関連情報への広がりも期待できます。 こうした物理的な展示施設と,インターネットをはじめとする仮想施設 とを併用することが,情報の洪水に溺れない秘訣かもしれません。 アークメディア通信>>>>>>>>   アークメディア住まいの情報に,(社)日本建築家協会理事の建築家   斉藤孝彦氏の「シックハウス&シックビルディング」に関するコラ   ムを追加掲載いたしました。   是非、ご一読ください。      http://www.arcmedia.co.jp/      また,日本建築学会の建築文化週間の一環で学生が主催する学生ワー   クショップ「あなたとわたしのイス」が開催されます。   「都市において建築(モノ)をつくるとはどのような行為なのか?」   といった企画趣旨のワークショップです。   詳細は,アークメディアのイベント情報,      http://www.arcmedia.co.jp/ARC.htm   もしくは      http://www01.u-page.so-net.or.jp/cb3/kenji777/98/   を参照下さい。5/22までが登録期間です。 ================================================================ ○電子メールマガジン「ArcMediaマガジン」第8号 1998/05/18   発行元:株式会社アークメディア       http://www.arcmedia.co.jp/   (執筆:企画開発部 山田 雄一 mailto:youichi@arcmedia.co.jp)            【ArcMediaマガジンは、転載大歓迎です。】 ==================================== ArcMedia Magazine =========