観光における情報とは

観光情報と一概にいっても、様々な種類が存在している。特に、インターネットの普及は、「情報発信」のハードルを低くし、「情報」の混乱と、反乱をまねているとも言える。
ここで、「情報」というものを整理してみると

  1. 情報というものは、情報発信者がいて、情報受信者がいて初めて成立する。
  2. 情報の発信者も受信者も、情報そのものは「目的」ではなく「手段」である。
  3. 情報とは、「事実」が「発信者の目的」にあわせて方向付けされたものである。
ということが言える。

これを情報発信者の側から考えれば、

  1. 情報発信の目的を明確にする。
  2. 対象とする「情報受信者」を設定する
  3. 目的を達するに相応しい手段を選択する
  4. 目的にあわせて、情報を加工し提供する
という事が必要となる。

観光における情報の「目的」とは

では、観光情報における「目的」とは何か。
消費者となる観光客の行動パターンから分類すると以下の4つが考えられる。

  1. 観光の需要喚起のため
  2. 出かける際の利便性のため
  3. 観光行動を誘導するため
  4. 再来訪を促すため

観光の需要喚起のため

まず、大前提として、観光地であれ観光施設であれ、消費者にとって、認知されていないものは例え現実に存在していたとしても、消費者にとっては「無」と同じである。
よって、来訪してもらうためには、まず「認知」してもらうことが重要である。
こうした情報の好例は、TVや雑誌の旅行特集、広報用ポスターなどが挙げられる。
しかしながら、認知というのは必ずしもプラスではない。例えば何か大きな事件が起きたとか、地震などの天災に見舞われた、環境破壊が起きているといった情報によって認知されてしまっては、認知自体がマイナスにはたらいてしまう。
つまり、観光地や観光施設にとって、一番、重要なことは、消費者に「行ってみたい」という動機付けを伴うような認知をしてもらう、もしくは、認知を変えてもらうこととなる。
新たに認知してもらうこととと、認知を変えてもらうことは、似て非なるものであるから、同じ需要喚起であっても、自らの現在の位置づけを明確にしないと情報発信側と受信側(消費者)との意識にズレが生じ、実効性の無いものとなる。
また、情報量が増大しているため、消費者側は処理が追いつかず、結果、第3者がフィルタリングした情報や、知人からの口コミを重視する傾向が強まっている。第3者や消費者コミュニティにおける評価情報を盛り込んでいくことも重要となる。

出かける際の利便性のため

漠然と「行ってみたい」と思っていても、「行き方が解らない」「お金がかかりそう」など、実際に行動に移すまでは様々な課題がある。時刻表や宿泊施設リストの提供、パックツアーの提示などはこうした課題解決に役立つ情報提供である。現在では、オンライン発券など単なる情報提供から諸手続までをセットにする事が可能であり、更に効率的になっている。
もし、「行ってみたい」という想いが同程度の観光地が複数あった場合、こうした情報収集から始まる諸手続がより容易な観光地が選択されやすくなろう。逆に、「行ってみたい」という想いが強くても、実際に行動に移すための情報がほとんど存在しない場合、その需要は潜在的なままで終わってしまう事に繋がる。

観光行動を誘導するため

消費者が、実際に旅行先を訪れたときに必要となるのは、現地での「インフォメーション」である。
道路標識、観光案内所や道の駅といったものが、こうした「インフォメーション」に相当する。
ところで、団体のパックツアーを除けば、最終的な行動は消費者自らが決定するが、その多くは現地でのインフォメーションにかかっていることが多い。ガイドブックでは見落としていた、興味を持たなかったようなものでも、現地で移動中に案内を見たことで立ち寄るケースは多いし、道路標識がしっかりしているところでは地図を見ずに移動していく。一例として、首都高速からTDLへの最寄ランプは葛西であるが、住宅地や流通団地への交通流入を避けるために、浦安ランプを利用し遠回りするよう掲示されている事が挙げられる。
来訪の動機付けをするほどの魅力は持っていないが、「近くまで来たなら寄ってみて損は無い」という施設を持った地域は数多いはずである。であるなら、インフォメーションの内容をナビゲーションにまで高め、消費者の観光行動を誘導してやることを意識すべきである。例えば、域内の施設や資源を系統立て、時間別や目的別のモデルコースを例示してやったり、道の駅を周遊コースの要に設置して集中的にプロモーションしてやることが挙げられる。また、Iモードや、次世代カーナビなどプッシュ型/オンデマンドに情報を消費者に届ける技術も開発されてきており、今後の有力なツールとして注目される。
しかしながら、こうしたナビゲーションが不全であると、単なる氾濫情報の提供に終わってしまうことが多く、消費者に取っては役に立たない不要な情報となることも多い。

再来訪を促すため

国内観光旅行が頭打ちとなった現在、フロンティアはほとんど残されていないのが現実である。
よって、重要となるのは、来訪後における情報提供である。
代表例としては、利用後に賀状やDMなどを送付する事が挙げられる。
第1の「需要喚起」と似たところがあるが、既来訪者に的を絞ることは、それだけ明確な対象者を設定でき、より積極的で、緻密な情報提供が可能となる。年齢別、居住地別にDMの内容を変えることなどは好例であろう。
ところで、利用後の場合、情報提供にあわせて、消費者の自地域、施設に対する評価情報を収集出来ることにも注目したい。同じ施設を訪れたとしても、その評価はまちまちである。そうした評価を元に個別にフォローし、情報提供を行うことで、より効果的に動機付けを与えられるし、また、自らの客観的なポジショニングを把握することにも繋がる。また、そうした取り組みによってCSの増大を図れれば、口コミによる効果も期待できよう。

情報発信にはマーケティングとの協調が必要

以上のように、情報発信はそれ単体で存在するわけではなく、マーケティングとの協調が必須である。現在のように、日々、新しい情報発信手段が開発されると、手段が先行してしまうことが多く、ホームページによる観光情報発信などは、ほぼ「常識」となっているが、それにマーケティング的な位置づけがなされていなければ、ほとんど意味の無い情報発信となってしまう。なぜなら、情報発信は手段であって、目的ではないからである。
目的を定めるにはマーケティングが必要である。