■墨田区内歩き回り(1998年10月22日)

 

□墨田区役所 ~工房ショップ事業について


まず、墨田区役所 で、工房ショップ事業、及びミニ博物館(モデルショップを含む)についてのヒアリング。
以下、結果を抜粋。
 

事業導入の背景 ~直販体制を作りたい

区内には中小の製造業者が多い。その中でカバンや洋服などは最終製品を作っている業者が多いが、流通の過程の中でマージンがとられてしまうし、自社のブランドを出すことも出来ない。工房(工場)に販売機能を持たせることで、直販体制を作り、下請けからの脱却と知名度アップを図りたい。
また、物づくりの現場を見せることで、より生産者と身近になってもらえるのではないだろうか?。

期待効果 ~事業者の活性化

  1. 下請けからの脱却
  2. 知名度の向上
  3. より顧客と密接な関係の構築(イージーオーダーなど)
  4. 顧客ニーズの動向を直に感じることによる商品力の向上

反応 ~概ね良好

新聞発表以来、概ね好反応。
区外からの問い合わせ(転入の打診)や、対象地区外からの問い合わせも。

問題点

まだ、始まったばかりの事業なので、特にこれといった問題点は無い。
が、想定されるものとしては、
  1. 補助額が高額ではないので、工房側の負担は相応のものとなること。
  2. 工房ショップといっても、ガイドラインがあるわけではなく、事業者自らが考えるため、効果的なものが出来るのか。
  3. 製造業一筋の人ばかりなので、営業的な対応が出来るのか。

工房ショップ事業とミニ博物館(モデルショップ事業)との相違は

モデルショップ事業は、マイスター制と組み合わせたものであったため、ハードルが高く、あまり普及できなかった。また、対象地域が区全域としているため、集積のメリットが出てきていない。
一方、工房ショップ事業では、マイスターのような特別な技術分野だけでなく、一般的な製造業にまで枠を広げる一方で、地域を3地区に限定し、集積による相乗効果を図りたい。

今後は

まだ、始まったばかりなのでこれを普及させていくことが第1。
また、曳船駅前で進んでいる公団の再開発ビルの1フロアを、工房ショップフロアとすることも検討中。(自分のところを改修するのは大変なので、そうした場を提供してもらえないかという問い合わせがあるそう)

総括

ミニ博物館やマイスター、モデルショップという「すみだ3M」活動をしてきたが、いまいち(後述)で、地域を絞って、再出発しようということらしい。
対象地区として3地区を挙げているが、本命は、アパレル系メーカーの集積が見られ、かつ、路面整備などが行われている馬車通りらしい。
□馬車通り風景
歩道及び車道の路面が整備されており、各種、ランドスケープ整備も行われている。
□馬車どおりのアパレルメーカー1
路上に服が出ていたが、売っているわけではなかった。
これからダンボール箱に詰めて、出荷するらしい。
□馬車通りのアパレルメーカー2
こちらは、更に大量のダンボールが積まれていた。
バーゲン時期には、これらの店でも直販しているそうだ。

□ミニ博物館・モデルショップ

「百聞は一見に過ぎず」 ともかくも、ミニ博物館・モデルショップを見てまわりました。
 

開店休業状態のショップ

多くの博物館及びショップは、開店休業状態であった。また、既に廃業してしまっているショップも、3ヶ所(現在開業中21ヶ所)にのぼっている。
屏風博物館
非常にわかりにくい場所(地図も間違っていた)にあり、店舗も閉鎖的で入りにくい。内部も無人であった。
ニットギャラリーカワシマ
本来空けられているはずのブラインドがしまっており、入り口のサインもなかった。
活用されていない原因については、つっこんだ話は聞けなかったが、


の3点が主原因であろう。

がんばっているショップ

タキナミガラスファクトリー
非常に凝ったつくりの建物と、ガラスショップ、ガラスづくり体験工房、ガラス博物館、工場見学ブースなど質の高い発信を行っているショップ。
墨田区のミニ博物館・モデルショップ指定を受けてはいるが、規模にしてもお金のかけ方にしても、異質。
企業のショールームと捉えたほうがよかろう。駐車場も唯一、この施設だけが備えている。
このショップには、他にも客が来ていた。
しかし、ガラス屋っていうのは儲かるのだろうか。

 
 
桐の田中
大掛かりな、ショップ兼博物館を公開している。また、階上には製作工房があり、桐細工の製作現場を見ることが出来る。(今日は見れなった)
馬車どおりに近く、工房ショップにとっても見本となりそうなつくり。
が、ここも客はおらず、店の人もいなかった。(私が入っていったら、奥から、ノソノソと出てきた)

 
 

ミニ博物館についての感想

正直なところ、企画の空回りという感じが否めない。
特に、車での回遊が難しいにもかかわらず、施設が散在してしまっているのは致命的。資料ではバスなどの紹介もしているが、それぞれは小さな施設なので、わざわざバス代を払ってまで回遊するとは思えない。
新フラノプリンスホテル隣接のニングルテラスは、一つ一つの店はたいしたこと無いが、「倉本聡」監修というブランドと、各店舗が集住していることが大きな魅力となっている。リゾート地の店舗と同列に扱うものではないが、やはり、歩ける範囲に集まることは重要な要素であろう。

製作過程を見せること自体は、そう目新しいことではない。実際、街歩きの中でも、手打ち蕎麦屋をみかけた。(写真

この蕎麦屋を含め、街中には、まち歩きをして楽しめそうな空間は散在しており、それらと組み合わせることが出来れば、もう少し、魅力が増しそうなので残念。

この手の企画を事業化するにあたっては、

  1. まち歩きの動線を考え、歩きやすい空間を連続してつくる。
  2. パンフレットなど無くても、興味が持てるようなサイン計画を行う。
  3. 工業にとらわれず、飲食なども含めたディスプレイを考える。
  4. 施設内に入らなくても外部から楽しめるようなデザイン(ショーケースなど)を考える。
  5. スタンプラリーのような周遊を促す仕組みを考える。
などを考慮すべきだろう。

墨田の町でみかけたもの

 
□隅田川スーパー堤防
今では、非常に有名になった隅田川のスーパー堤防である。従来のかみそり堤防で親水空間を失った反省の元に、水面近くにまで降りれるようにした事は、評価に値するだろう。
が、現実問題として、ホームレスの居住地となってしまっていることも事実である。
対岸(台東区)は幅が広く直線的な事や、より繁華街に近いことからか、点点とホームレスの住居が並んでしまっている。墨田区側は、左図のように段差をつけたり、歩道部を曲げたりと工夫しているためか、ホームレスは少ないが、右図のように、すこし幅広の直線部が続いているところには、住居が設置されてしまっている。
多くの人がはぜ釣りを楽しんではいたが、いるのは、おじさんだけで、若い人や子供連れ、アベックなどは皆無であった。(時間の関係もあろうが)
地方部はともかく、都心では、オープンスペースの計画時に、ホームレス対策が必要となろう。

□サイン・路地・運河・廃ポンプ場
ぽつんと唐突に、「隅田川七福神散歩」なるサインボードが設置されていた。(東京都設置)
周辺の施設が盛りだくさんに載っていたが、管理が悪く、だいぶ痛んでいた。
また、わき道に入っていくと、幅2mにも達しないような路地が残っていたりする。接道要件を満たさないから、家の改築・新築は大変だろうにとも思うし、防災上の問題もあるが、こうした空間はどこかほっとするのも事実である。
また、運河には屋形船が何艘かうかんでいた。下町の風情として、これも魅力のひとつであろう。
この運河の左手のコンクリート造の建物は、東京都下水道局のポンプ所である。すでに放棄されているらしく荒廃し、周りも板塀で囲われていた。レトロ建築というほどのものではないが、存在感はあり、運河に隣接しているという立地をいかした再利用という手もありそうだ。

 
□親水公園・ポケットパーク
川を暗渠として、その上に親水公園が作られていた。
かつての橋は基本的にそのまま残されており、親水公園と立体交差になっているため、移動もたやすい。
多くの子供連れなどがここを利用して移動していた。
川の上に川を作っているような状態だが、単なる暗渠で「水」空間を失ってしまうよりも、人工的であっても水を残す方が有意義であろう。この手の開発は、墨田区だけでなく、他所でも見うけられる手法である。
また、墨田区内では、最右図のようなポケットパークをよく見かけた。ただ、これも孤立してぽつんとあるため、どこもそう利用されているようには見えなかった。周りの空間や、動線といったものを利用できれば、休息・交流の場として面白い空間になるとは思うが....。

 
□ふぐ・吉良邸跡
そのほか、煉瓦づくり風の凝った建物や、ふぐ料理屋の巨大なディスプレイ。また、吉良邸跡(首洗いの井戸がある:最右図)など、いろいろな要素が点在していた。
まち歩きをして楽しめそうな要素はいろいろありそうです。マネージメントさえうまく出来れば、化けそうな雰囲気はあります。それと、「まち歩き」という地味なアクティビティに誘い込む、インパクトの強い誘引要素、ショッピングとか、うまい飯が食べられるとか、というものが必要でしょう。

撮影アルバム(江戸東京博物館を含む撮影した全写真を参照できます)