中心市街地活性化法とTMO(タウンマネジメント機関) 1999/10/05作成

中心市街地活性化法とは

中心市街地活性化法は、1998年7月24日に施工された法律である。「大規模小売店舗立地法」「改正都市計画法」とならんで、通称「まちづくり三法」と呼ばれている。
  1. 市町村のイニシアティブを重視し、独自のコンセプトに基づき、中心市街地の活性化を図るための基本計画を作成
  2. 魅力ある商店街・商業集積の形成による「商業等の活性」と道路、駐車場、公園などの基盤施設や土地区画整理事業、市街地再開発事業などによる「市街地の整備改善」を一体的に推進
  3. 個店や商店街に着目した「点」「線」対策から「面(中心市街地)」へ対象を広げる商業などの活性化対策
  4. 独自性、先進性、熟度などの観点から基本計画に定められた事業について、関係省庁が連携・協力し、重点的に支援を行う
の4点が主眼である。

中心市街地活性化法導入の背景

  1. 中心市街地の地盤沈下への対策/モータリゼーションの進行・高地価・硬直的な小売店
  2. 大店法廃止に伴う見かえり

適用の条件

  1. 概ね人口10万人以上の都市/規模の小さな自治体では効果が期待できない?
  2. 官報の指針に基づいた「市街地活性化基本計画」を策定する

目指すもの

中心市街地の商業地全体をひとつのショッピングモールと見たて、総合的かつ独自のすぐれた計画によって推進される事業の支援

現状

市町村が「活性化基本計画」を作成するために必要な調査・研究費等に対しては,国による補助支援がある。活性化基本計画が無いことには、TMOなども認証されず、その他の事業補助も受けられないので、活性化基本計画作成に対する補助を受けることが、自治体が整備に乗り出す第1歩となる。この補助支援制度の概要は以下の通りである。

活性化基本計画の内容

概ね以下のようなことをまとめることとなっている。
1.都市の現況および課題の整理と将来都市像の検討 2.中心市街地活性化基本方針および事業の検討 3.事業主体タウンマネジメントに関する検討 4.実現化に向けての課題の整理

5.まちづくりの熟度形成に向けた検討会・勉強会等の実施
 

まちづくりの事業主体となる組織

まちづくりに関わる様々な組織相関図

別図参照

まちづくり公社

市町村が、各種まちづくり事業の事業化のために設立する法人。都市整備公社とも呼ばれる。

まちづくり会社(3セク)まちづくり財団

行政と地元資本、住民とが共同で出資して設立する法人。

行政(及び公社)でも、通常の民間企業でも対応が難しい、「歴史的建物の買取・保存」や「空き店舗の買取・転用」、「共同駐車場の整備・運用」といった事を実施する事業主体となる。3セクということで、一応、公益性が担保されているが、株式会社である限り、営利を目的とした法人である。公益性にこだわり、財団法人化している場合もある。

長浜の株式会社黒壁が有名。

まちづくり株式会社(純民間)

純民間資本だけで、設立する法人。

多少なりとも行政からの出資を仰ぐのが通常なので数は少ない。

商店街振興組合などが自主的に空き店舗対策などに乗り出す場合に、受け皿としてこの町づくり会社を設立するケース(高松、秋田県鹿角市花輪大町商店街)、再開発組合が発展的解消して再構成するケース(津山)などがある。

商工会議所/商工会

商工会議所法にもとづく、公益法人。

概ね、各市町村にひとつ存在しており、地域の商工業者の福利厚生、情報提供などを行っている。

また、商業施設の近代化・合理化の為の環境整備事業の事業者となることも出来、TMOの受け皿としても想定されている。

商店街振興組合

小売商業・サービス業を含む事業者などが商店街を中心にして組織するもの。30人以上が近接して、事業を営んでいることが必要。

各種商店街近代化・合理化事業の事業主体となれることもあり、設立要件が厳しく、相応の規模の商店街で無いと組合化は難しい。

事業協同組合

中小企業者が相互扶助の精神に基づいて、共同に事業を行い、経営の近代化・合理化と経済的地位の改善向上を図るための組合。4人以上の事業者で設立可能。

商店街振興組合よりは容易に設立できるが、その分、融資条件などは有利では無くなってしまう。

再開発組合

市街地再開発の為に設立される「組合」。

都市計画決定前の組合は、再開発準備組合と呼ばれ、任意組合に相当するので、法人格は無い。都市計画決定されて、晴れて事業主体となる。

市街地再開発は、行政や商工業者だけでなく、一般住民にも権利関係が複雑に絡みあう事業のため、様々な協議・調整作業が必要となる。

また、事業期間も(準備組合期間も含め)非常な長期に及ぶため、組合の担当者は、町づくりに関する様々なノウハウを蓄積することとなる。

その経験を活かして、本来なら、事業後は、組合を清算・解散となるのであるが、発展的解消をして新たに「町づくり会社」となったり、準備組合段階で「町づくり会社」に組織変更したり、逆に「町づくり会社」が再開発組合/再開発準備組合に事業参加するケースが出てきている。

組織構成について

 

行政主体のまちづくり

従来からの行政及び公社によるまちづくり。

広範囲にかつ、ダイナミックな開発が可能であるが、しばしば、地元住民とのコンセンサス不足が問題となる。

商店街主体のまちづくり

商工業者が自主的に、商店街の活性化を目的にまちづくりを行っていくケース。当然、行政もタッチしてくることになるが、空き店舗対策などを行政に頼らず、自主的に対応していこうという傾向が強まりつつある。高松や鹿角で見られる。


 

並列型まちづくり

行政、商工業者、地元有志(まちづくり会社)が、それぞれ役割分担をしながら、並列的にまちづくりを進めていくケース。長浜がこのケース。

“行政主体のまちづくり”における住民とのコンセンサス不足の部分を、まちづくり会社をいれることで、補っていくことの出来るモデル。

しかし、それぞれが並列的に動いていくため、全体的なマネージメント言うビジョンが抜けている。協議会制度を通して、それぞれが協議していくことが求められている。

住民主体まちづくり

まちづくり会社をTMOとして考え、総合的なマネージメント機能を持たした方法。まちづくり会社が町全体を覆うショッピングセンターの事業者で、商店街振興組合などはそのテナントと考えると解りやすい。行政や商工業者だけでなく、一般住民もまちづくり会社を通して、積極的なまちづくりに酸化できるようになる。理想的なTMO運用のモデルケース。

考察:中心市街地活性化法

中心市街地活性化法の問題点

中心市街地活性化法は、もともと、大店法廃止の中から生まれてきた経緯もあり、中心市街地の“商業地”の活性化を図ることが目的である。

郊外化する大規模店舗・ロードサイド店舗に対し、中心部の商店街の魅力(=利便性、雰囲気、品揃え、快適さなど)を高めるための手段として考えられているといって良いだろう。

が、そううまくいくのであろうか?
 

  • 策定期間が急過ぎる

  • 事実上、今年度と来年度で活性化基本計画をまとめなければならない。一般的な再開発事業でも、準備組合から始まって都市計画決定を受けた正式な組合になるまでに、5~10年が必要となるのに、対応できるのか?
  • 対象が幅広すぎる

  • 予算のばら撒きに近い形で補助が行われるため、ほとんどの「市」が補助対象資格を持つこととなる。中心市街地の問題は、全国的な問題であるが、5~10万人、10~30万人、30万人以上と、それぞれの町が抱える問題は本質的に異なる。
  • 自治体で対応できるのか

  • 従来、地元の自治体が自らの発想で事業を行ったのは、「ふるさと創生一億円」くらいなもので、その他は、ほとんど、国からの統制に基づいた処理しか行っていない。自主性はほとんど無いのが現実である。とつぜん、大幅な権限が与えられたとして、処理できるのか?

    予想される結果

    自治体にとって、今回の法制度及び補助は、“乗り遅れてはならない”ものであり、各種商工会や都市コンサルタントもそのように煽っている傾向にある。

    このような状態で、短時間に大量の自治体が「中心市街地活性化」に乗り出すことは、金太郎飴的な事業計画を各所に発生させることになろう。(かつてのリゾート法のように)